障害者枠で転職活動をしている人は、
「企業は自分の何を見て採用を決めているんだろう?」
と気になるのではないでしょうか。
もちろん、これまでの職歴やスキル、仕事への適性などは重要です。
ただ、障害者枠では、一般枠の採用とは少し違うポイントも採用担当者は見ています。
それが、
「この人を採用したら、法定雇用率上は何カウントになるのか」
ということです。
今回は、企業の人事経験者として、障害者雇用の「カウント」という少し表に出にくい部分について解説します。
まず知っておきたい「法定雇用障害者」
現在、民間企業の障害者の法定雇用率は2.7%です。
2024年4月に2.5%へ引き上げ、2026年4月に2.7%へ引き上げられ、障害者の雇用義務が発生する企業の範囲も、常用雇用労働者40人以上から37.5人以上に広がりました。
企業が必要とする「法定雇用障害者数」は、原則として、
「常用雇用労働者数 × 2.7%」
で計算し、1人未満の端数は切り捨てます。
例えば120人の会社なら、
120人 × 2.7% = 3.24人
なので、3人以上の障害者雇用が必要です。
ただし、ここでいう「3人」は必ずしも実際の障害者3人という意味ではありません。
障害の程度や労働時間によって、1人を0.5人、1人、2人などとしてカウントする仕組みがあるからです。
障害の程度や勤務時間によってカウントが変わる
基本的な考え方は次のとおりです。
フルタイムに相当する場合
週所定労働時間30時間以上の場合は、基本的に1人=1カウントです。
ただし、重度の身体障害者、重度の知的障害者は1人=2カウントになります。
身体障害については、1級~7級に分かれている等級のうち、1級・2級が重度として扱われます。知的障害については、療育手帳の区分等により重度かどうかを判定します。
週20時間以上30時間未満の場合
短時間労働者は基本的に0.5カウントです。
ただし、
- 重度身体障害者 → 1カウント
- 重度知的障害者 → 1カウント
- 精神障害者 → 当面の間、特例により1カウント
となっています。
週10時間以上20時間未満
2024年4月から、週10時間以上20時間未満の重度身体・重度知的・精神障害者については、0.5カウントの対象となっています
このように、障害の種類・程度と、週の所定労働時間によってカウントが変わります。
では、人事はなぜ「何カウントになるのか」を見るのか
理由はシンプルです。
企業には障害者を一定数雇用する義務があるからです。
そして、常用雇用労働者が100人を超える企業で法定雇用率を達成していない場合、不足する障害者1人につき月額5万円の「障害者雇用納付金」を納付する仕組みがあります。
例えば、法定雇用障害者数に対して1人不足していれば、原則として年間60万円の納付金になります。
2人不足なら年間120万円です。
※実際の納付金額は対象企業の規模などによる例外があります。
また、法定雇用率を達成できていない企業に対しては、単にお金を払えば終わりというわけではありません。
一定の基準に該当する企業には障害者雇入れ計画の作成命令や適正実施の勧告などが行われ、それでも改善が見られない場合には、企業名が公表されることがあります。
つまり、人事にとって、
「現在、自社は何カウント不足しているのか」
「この人を採用すると何カウントになるのか」
は、障害者採用を進めるうえで無視できない情報なのです。
応募書類では「経歴・スキル」だけを見ているわけではない
一般的な中途採用なら、応募書類を見るときに、
「これまで何をしてきたか」
「どんなスキルがあるか」
「募集している仕事ができそうか」
を確認します。
障害者枠の採用でももちろんこれは確認します。
ただ、それに加えて、
「この人は雇用率上、何カウントになるのか」
も確認します。
- 身体障害者手帳は何級か
- 知的障害の場合は重度に該当するか
- 精神障害者保健福祉手帳を持っているか
- 週何時間勤務できるのか
といった情報です。
これは「カウント数だけで採否を決める」という意味ではありません。
実際には、仕事内容との適性、職歴、スキル、勤務条件、配慮事項などを総合的に見て判断します。
ただ、障害者枠の採用においては、応募書類を見た時点から「この人を採用すると何カウントになるのか」という視点が入ることは、求職者側にも知っておいてほしいポイントです。
人事から見ると「2カウント」は大きい
重度の身体障害者・知的障害者は、フルタイム勤務で1人=2カウントとなります。
企業にとっては、1人の採用で2人分の雇用率算定につながるため、数字だけを見れば非常に大きな意味があります。
ただし、ここで難しいのが、
「2カウントになる人を採用すれば簡単に法定雇用率を達成できる」
というわけではないことです。
重度障害の場合、仕事そのものは十分にできたとしても、職場環境や設備面で対応が必要になるケースがあります。
例えば車椅子を利用している方であれば、
- 建物の入口
- エレベーター
- オフィス内の通路
- デスク
- トイレ
- 駐車場
など、ハード面の確認が必要になることがあります。
既存の建物によっては、改修に時間や費用がかかることもあります。
そのため、
「2カウントだから企業にとって採用しやすい」
とは一概には言えません。
同じ「2カウント」でも必要な配慮は大きく違う
重度身体障害であっても、その障害の種類によって仕事への影響はまったく違います。
身体障害には、肢体不自由だけでなく、心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこう・直腸、小腸、HIVによる免疫機能、肝臓などの内部障害も含まれます。
つまり、
「身体障害1級・2級=見た目に分かるほど体が不自由だ」
ということではありません。
例えば、心臓や腎臓、肝臓などの臓器移植を受けた人の中には、移植後の状態や残存する機能障害によって身体障害者手帳1級などの重度区分に該当する場合があります。
ただ、移植後の健康状態が安定しているケースでは、見た目には障害があることが分からない場合もあります。
一般的なデスクワークを問題なくこなし、必要な配慮が、
「定期的な通院が必要」
「体調管理のため一部配慮が必要」
といった程度であれば、企業側からすると、通常の職場環境で受け入れられる可能性があります。
同様に、HIV感染症による免疫機能障害も、身体障害者手帳1級、2級などの対象になりますが、治療によって状態が安定しており、通常の仕事を継続できる人もいます。
それでも、身体障害1級・2級であれば、フルタイムに相当する勤務では2カウントです。
つまり、
「雇用率上は2カウント」
「業務遂行能力は一般の社員と同等」
「職場で必要な配慮は限定的」
というケースが存在し得るわけです。
これは、企業の人事からすると非常に重要なポイントです。
逆に「軽度」に見えても配慮事項が多い人もいる
反対に、手帳の等級だけを見ると軽いように見える人でも、仕事上の配慮が多いケースがあります。
例えば、
- 長時間勤務が難しい
- 疲れやすく休憩が必要
- 定期的な通院が必要
- 音や光など職場環境への配慮が必要
- 指示の出し方に工夫が必要
- 対人コミュニケーションに配慮が必要
- 業務内容に一定の制限がある
などです。
国は法定雇用率を決める際、重度の障害者を雇用した場合は、2人分の雇用をしたことにしよう、としたわけですが、企業側から見ると、「必ずしも、重度障害者は配慮事項が多く、重度でなければ配慮事項が少ないというわけではない」というのが実態なのです。
障害者枠の採用では「カウント」と「採用後の働き方」の両方が見られている
ここまで読んで、
「結局、企業はカウントのために人を採用しているの?」
と思う人もいるかもしれません。
企業側の実務を知っている立場から言うと、カウントは確実に重要な要素です。
特に法定雇用率を満たせていない企業では、
「あと何カウント必要なのか」
「今回の採用で何カウント増えるのか」
ということは、人事にとって非常に現実的な問題です。
しかし一方で、カウントだけで採用を決めることもできません。
採用した後に仕事をしてもらう必要があるからです。
そして、企業にとって採用後の働き方をイメージしやすいのは、
「必要な配慮が明確で、その配慮をすれば安定して業務を遂行できる人」
です。
障害者雇用専門の転職エージェントを利用するメリット
ここまで読んで、
「必要な配慮を明確にするといっても、自分の場合、企業に何を伝えればいいのか分からない」
と思った人もいるでしょう。
障害者枠の転職活動では、
「自分の障害をどう説明するか」
「どこまで配慮事項として伝えるか」
「逆に、何ができるのかをどうアピールするか」
が非常に重要です。
そこで、障害者雇用専門の転職エージェントを利用する方法があります。
障害者雇用に詳しいキャリアアドバイザーであれば、
- 自分の障害特性
- 必要な配慮
- できる仕事
- これまでの職歴
- 企業に伝えるべき情報
- 求人との相性
などを整理するサポートを受けられます。
特に、
「障害についてどこまで企業に伝えればいいのか分からない」
という人には、こうしたサービスを利用するメリットがあります。
自分の障害特性と配慮事項を整理し、
「このような配慮があれば、私はこの仕事ができます」
と伝えられることは、転職活動において大きな意味があります。
一人で整理するのが難しい場合は、障害者雇用専門の転職エージェントに相談してみるのも一つの方法です。
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